郷土の花・樹木

9. 鳥屋野逆ダケの藪

ほぼ枝が地面に水平に出た逆ダケ

鬱蒼とした竹林の遊歩道

●所在地: 新潟市中央区鳥屋野1丁目

●開園期間:1月4日~12月27日

●問合せ先: 新潟市文化観光・スポーツ部歴史文化課 電話  025-226-2580

 

 新潟市が公有化し、整備が進められてきた「鳥屋野逆ダケの藪」が今年5月から公開されました。逆ダケは、新潟市中央区にある枝が枝垂れるハチクPhyllostachys bigra var.henonis)で、大正11年に国の天然記念物に指定されました。親鸞聖人の越後七不思議のひとつで、言い伝えによると、聖人が当地で布教した折に竹杖を地面にさしたところ、枝が逆に茂ったとされます。

 早速、出かけてみました。びっしりと茂った竹林には、ウッドチップが敷き詰められた遊歩道があり、ベンチも置かれていました。枝垂れる「逆ダケ」には青いテープで印がつけられていますが、昔の絵に描かれたような真下に伸びているものはほとんど見られませんでした。歩いているとまるで迷路に迷い込んだようで、風邪で竹がカラカラと鳴り、葉がサラサラと音を立てて、住宅に囲まれた場所でありながら、昔年の竹林かくありしかと思わせるものでした。

 さて、古い文献を調べて見ますと、江戸時代の百科事典ともいえる『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』(寺島良安 1712年頃)の越後の項に「紫竹林」の記述がありました。親鸞聖人が紫竹の杖を地面にさし、わが教えが正しければ、竹が繁茂し、枝が逆さに生えるであろうとおっしゃったとあります。ほぼ同じ内容の話が『越後名寄』(丸山元純 1756年)にもあります。ここではさらに、勢いよく生えていて容易に引き抜くことができるのは杖をさして生じたものだからであることや、淡竹(ハチク)という種類であることが記されています。時代は下って江戸末期の『越後土産』(紀興之編 1864年)には竹林が茂ったことは省かれ、枝葉が逆さに茂ったことのみが書かれています。

 「紫竹」とは冬にタケノコの出るカンチク(寒竹)の別名ということですので、逆ダケのハチクとは全く別のタケの種類ですが、当時は名称が混同されていたのかもしれません。また、新潟市の「紫竹」がつく地名も逆ダケの場所に近いことから、なにか関係があるのかもしれません。

(植物園だより37号(平成21年)掲載)