郷土の花・樹木

14. 薬照寺の大カツラ

 

  南魚沼市薬照寺の大カツラは、境内への石段を上がっていく右手の斜面に大きなスギと並んで立っています。もともとこの場所にあったカツラは、1780年に火事で全焼した本堂を建て直す際に伐採され、材として用いられたそうです。今は、そのあとに生えてきたひこばえ(※)がそれぞれ大きく育ち、株立ちになっています。

 樹高30m、幹周13m以上と樹勢はさかんで、これほどの木の黄葉はさぞ見事だろうと思わせる枝ぶりです。カツラの葉は黄葉のころ独特の甘い香りを放ちますが、薬照寺でも、かつては葉を香にして用いていたということです。

 12月中旬に訪れた折には、葉はすっかり落ちて向こうの山々も雪化粧でした。数百回も冬を経験してきた大カツラは、この冬も雪に覆われる地域を見守ってくれていることでしょう。

   (※)木を切ったあとや、根元から出てくる生育旺盛な若い枝のこと。

(植物園だより43号(平成23年)掲載)